珍事

うちの親はどうもひねくれたというか、素直になれないところがあって、昔から私や姉を手放しで褒めようとしなかった。

私たち姉妹は二人とも小さなときから外で遊ぶより家で鉛筆片手に絵や文字を書くほうが好きで、二人して一日中黙々と絵を描く事も多かった。
うまく出来たらもちろん褒めて欲しくて親に見せたりしたが両親、特に父は一度も「上手だね」とは言ってくれず、ただ「ふぅん。」と言うと視線をPCの画面に戻してしまう。

そういうやりとりが続く中でいつしか姉妹の中で
「どうせ褒めてくれないんだから見せてあげない!」とこちらもひねくれた感情が芽生えてしまっていた。
でも心の何処かでは認めてもらいたかったんだと思う。


小中学校在学中は二人とも美術と書道が得意だったので毎年展覧会に出してもらったりして入賞もした。
そういう時は父は展覧会を一緒に見に行ってくれた。褒めてはくれないけど。
褒めないくせにPTAで他のお母さん達に「娘さん達本当に絵がお上手なんですね!」とか言われてデレデレしてた時は本気で大嫌いだったなぁ。




それから姉は美大生になって、沢山作品を作るようになったけど、それでもやっぱり父は褒めないので自然と姉は見せる事をやめてしまった。
私は高校生になってから部のポスターや文化祭のポスターを描いたりしたけど、美大生の姉ですら褒めて貰えないんだから私が褒められるわけなかった。笑




そして昨日、姉がすごく久しぶりに父に作品を見せた。それも姉が自分の方向性を見出してからの作品を一つにまとめた作品集として。とても綺麗な装丁や綴じ方をみたら姉がこの一冊に費やした努力は誰にだって分かったはずだ。

そんな作品を見た父の一言目は
「印刷がなぁ...」
だった。
よくよく聞いたら「折角作品は良いのに印刷のせいでよさが出てない。」って言いたかったらしいけど、伝わるはずもなく...。
そこから親子ケンカに発展して二人でぎゃーすか言い合い始めたので仲裁に入っていたんだけど、途中からなんだか自分まで悔しくなってきて最終的には姉妹で子供みたいに泣きじゃくってしまった。
姉をかばっていたつもりだったのに、いつしか父親から褒めて貰えなくてひねくれていた昔の自分が言えなかったことを代わりに投げつけているようなそんな気分だった。

親から褒められなかったおかげで私も姉も褒めて貰う為にもっとすごいものを作ろうって思わされていたなら両親の教育は大成功だと思うけど、それでも、いくつになっても父親に認めてもらいたいって気持ちは変わらないんだなぁと、なんだか悔しい気持ちになったよ。



それにしても我が家の恐ろしいところはあれだけ大げんかしても翌日にはみんなけろっとしているところだと思う。