実習二日目
二日目に、私は牛に恋をしました。
実習に行く前は犬や猫みたいな小動物が好きだったし、牧場にいる動物の中だったら馬がかっこよくて好きだった。
二日目の早朝、牧場作業をする前はむしろ目をひんむいてる姿がちょっと怖かった。
糞尿を掃除していると、私の背中を小突いてくる。
ほほやおでこに手をおいてみると、じーっとこっちを見つめてくる。
かわいいんだなぁ、これが。
うちでは猫を飼っていて家に帰ると玄関まで迎えに来てくれたり、座っていたら膝の上にのっかって甘えてきたりしてすごくかわいい。
そういうかわいさとはまた違うものが、牛にはあった。
大きな動物の、なんていうんだろう、包容力?みたいなものを感じた。
でもこのかわいくて温かい動物が産業動物だって事を考えると愛玩動物みたいにかわいいかわいいって愛でるのは正しいのかって、お腹をぐるぐる鳴らしながら考えました。
食事は生きる上で欠かせないね!
朝食ではしぼりたての牛乳が出されました。絶品・・。
濃いというより後味のすっきり感に感動した。
朝ご飯を食べたら、次は直腸検査。
漫画「銀の匙」は読んだ事ないんだけど、直検のシーンとかあるのかな。
直腸検査ではウシのお尻の穴に手をつっこんで、お尻から子宮の状態を確認したりします。
手袋をはめて潤滑剤を塗って、おしりにずぶーっと肘の上の方まで手を入れます。
お尻の中は熱くて、もちろんうんちもあるけど手を動かしていくと骨盤を触ることができたり奥の方まで手を入れると胃に触れたりにして、座学では絶対学べないことをさせてもらいました。
専門的な知識があるわけではないから、触って「あーこれなら受精させられるな!」って判るわけでもないのでウシからしたら完全に触られ損だよね。
ちなみに直検後のお昼ご飯はカレーライスでした。
午後は動物比較の授業でウシと戯れていました。
日本にいるウシの99%は人工授精で種付けされ、こどもを生んだウシは授乳期に入るので子牛とは別の牛舎で授乳期が終わるまで毎日搾乳され、乾乳期に入るとしばらく休み、妊娠出来るようになったらまた種付け。その繰り返し。
お乳が出なくなったら肉や毛皮は加工され、私たちの手元にやってくる。
学校で習ったときは、ちょっとかわいそうだなって思ったんだ。
そういう機械みたいだなって。
実習で農家の人たちの仕事を見て考えはかわった。
産業動物として人工授精で命を生み出している時点で、生き物のサイクルに合わない事をしている時点でそれをさせている側が「かわいそう」と思う事自体が間違っている。
私たちにできる事はその命を絶対に無駄にせず頂ききることで、その為にウシが無事に分娩や搾乳が出来る環境を整え飼育する事が命に対する誠意だと、自分の中で納得できた。
「生きる事は殺す事」の意味が少し判った気がする。
すっきりしたのでもうちょっと勉強して掘り下げて課題のレポートとして提出する事に決めた。